Eine geheime Basis

高校二年の夏休みに暑さでやられた俺達は付き合い始め、キスを経て手で抜きあう関係になった。お気に入りのローションをお互いの手に塗りたくって擦る。情けない話だが、いつも俺のほうが先に終わってしまう。だって、じんぺーちゃんの手つきがやらしーんだもん。これは絶対に誰にも言うなと釘を差している。
高校三年になって受験のストレスも相まって、手コキの回数が増えていった。じんぺーちゃんは手コキのテクだけレベルアップしているもんだから、二回ぐらいは軽くイカされる。情けない。
「なあ、これ気持ちいいか?」と聞いてくるのも煽りにしか聞こえない。
「こんだけヤッといてそれ言う?」
「いや、なんか、女と比べもんになんねーだろ」
ああ、そういう。そら比べもんになんねーよ。生で擦られて、いつ出してもいい気楽さと、松田の繊細な指先がどれだけ気持ちいいか。むかつくから言わねーけど。
そもそも松田はセックスのなんたるかを履き違えている。俺は松田の首元に鼻を埋めて汗ばんだ匂いを嗅いだ。これだよこれ。気持ちよくなりたいだけなら一人でオナってら。
「もしかして、じんぺーちゃんって童貞なの」
松田は「言わね―」と俺のちんこを手放してそっぽを向いた。あれ、むくれているのか、照れているのか。
けど、松田を狙ってた女の子は多いし、実際に告白されてるのも見たことはある。付き合ったという報告はされていないが、俺もしたことないし。俺は自分のものさしで考えたせいか、松田はてっきり童貞卒業していると思いこんでいた。
「なんでよ、教えてくれてもいいじゃんよ」
「絶対に言わね―。からかうしオメー」
それはほぼ「童貞」ですと言っているようなもんじゃねーか。そうか、松田は童貞なのか。などと勝手に決めつけたのが運の尽き、俺は急に松田の童貞に興奮してしまった。この男の、このご立派なちんこが誰にも使われていないだと?
俺たちは付き合い始めていたが、どっちが女役になるのかという相談すら面倒だった。どちらかがゲイならそんな話し合いもできたかもしれない。なんとなく、そういう話に触れないように手コキだけで完結するセックスもどきで満足していた。ケツにちんこを突っ込んだり突っ込まれたり、いや無理でしょ。みたいな。
なのに、俺は無性に松田のちんこが欲しくなった。この色男のちんこ、もしかして、俺だけのものになったりするのか? 言っておくが、俺は断じて処女厨でもないし、そんなこと気にしたことはなかった。ここで松田が童貞じゃなくても、俺はショックを受けたりしない。
なのに、俺は松田のハジメテが欲しくなったのだ。
これが独占欲というやつなのか。
「もし、松田が童貞だったら、俺の処女あげたのにな」
血管がばきばきに浮き出て臨戦態勢のままの松田のちんこを指先で遊びながら、俺は松田の表情を伺った。松田は苦悶の表情で何度も唸りながら悩んでいる。いや、もうそこは言えよ。というか言ってくれ。
「ほんとに、くれるんだな?」
耳まで真っ赤にして、怒ったような、怖い顔して見上げてくる。
俺は松田にキスをしてから「準備してくる」と部屋を飛び出した。

すっげぇこれも情けない話なんだが、繋がった瞬間、二人して笑いながら泣いてしまった。これも、俺たちだけの秘密だ。